インサイドセールスの分析指標
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この記事で扱う統計知識
インサイドセールスの分析 ― 架電数・アポ数に代わる「3つの健全KPI」とは
1. 実例:架電数を追いかけたら、チームが壊れかけた
先日、ISとFSの両方を管理する営業マネジャーの方からこんな相談をいただきました。
「最初は架電数をKPIにしていたんですが、メンバーが疲弊してきて。次にアポ数に変えたら、今度はFSから『質の低いアポばかり回ってくる』と言われるようになりました。ISとFSの関係も悪化して、チーム全体の雰囲気が悪くなっています。何をKPIにすればいいのか分からなくなってきました。」
このケースは多くのISチームが経験する典型的な失敗パターンです。
架電数をKPIにすると起きること
- メンバーは質より量を追いかける
- 見込みの薄い相手にも架電し続けて疲弊する
- コンタクトできない架電が増え、モチベーションが低下する
アポ数をKPIにすると起きること
- メンバーは受注確度に関係なくアポを取ろうとする
- FSに質の低い商談が流れてFSの勝率が下がる
- ISとFSの間に「あのアポは使えない」という不信感が生まれる
どちらも「数」を追いかけることで、本来の目的(受注に貢献すること)から外れてしまっています。
2. 解決策:3つの健全KPIをデータで設計する
KPI①: コンタクト率×商談化率(架電数の代替)
架電数の代わりに、以下の2つに分解します。
この分解によって「繋がらないリストに電話し続けている問題」と「繋がっても商談に持ち込めない問題」を切り分けられます。
実際のデータで見るとこうなります。
| メンバー | 架電数 | コンタクト数 | コンタクト率 | 商談数 | 商談化率 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 200 | 60 | 30% | 12 | 20% |
| B | 150 | 75 | 50% | 18 | 24% |
| C | 180 | 45 | 25% | 13 | 29% |
| D | 220 | 55 | 25% | 8 | 15% |
| E | 160 | 72 | 45% | 20 | 28% |
Aさんは架電数200件と最多ですが、コンタクト率30%・商談化率20%と低め。一方Bさんは架電数150件と少ないですが、コンタクト率50%・商談化率24%と効率が高い。この差が見えると「Aさんはリストの質を改善すべき」「Dさんはトークを改善すべき」という具体的な指導につながります。
KPI②: IS貢献勝率(アポ数の代替)
アポ数の代わりに、ISが渡した案件のFS勝率を測ります。
実際のデータはこうなります。
| メンバー | IS渡し案件数 | FS受注数 | IS貢献勝率 |
|---|---|---|---|
| A | 12 | 3 | 25% |
| B | 18 | 7 | 39% |
| C | 13 | 5 | 38% |
| D | 8 | 1 | 13% |
| E | 20 | 9 | 45% |
Dさんはアポ数8件と少ないですが、IS貢献勝率13%と最低です。これはアポの質が低いことを示しています。一方Eさんはアポ数20件・IS貢献勝率45%と量と質を両立しています。
この指標を導入することで「アポを多く取ること」ではなく「受注につながるアポを取ること」がISの目標になります。FSとISの評価軸が揃うため、関係改善にもつながります。
KPI③: ターゲット適合率(活動の方向性を測る)
受注した案件の属性(業種・企業規模・役職など)を分析して、ISが当たるべきターゲットを定義します。
過去6ヶ月の受注データをクロス集計すると以下のようになります。
| 業種 | アプローチ数 | 受注数 | 受注率 |
|---|---|---|---|
| IT・SaaS | 120 | 18 | 15% |
| 製造業 | 80 | 4 | 5% |
| 小売業 | 60 | 2 | 3% |
| 金融 | 40 | 8 | 20% |
| その他 | 100 | 3 | 3% |
IT・SaaSと金融の受注率が突出して高いことが分かります。この分析から「IT・SaaSと金融に集中する」というターゲット定義ができます。ターゲット適合率を測ることで、ISメンバーが正しい方向に活動しているかを確認できます。
3指標の相関分析
3つのKPIをまとめると、ISの活動全体を俯瞰できます。
商談化率とIS貢献勝率には正の相関があります。つまり「商談に持ち込む力が高いメンバーは、受注につながる商談も多い」ということです。この相関が見えると、商談化率の改善がFSの勝率改善にもつながるという仮説が立てられます。
面談での声かけ例
Dさんへの1on1
「Dさんのデータを見ると、架電数は220件とチーム最多ですが、コンタクト率が25%と低めです。おそらくリストの質に問題があります。今のリストはどういう基準で選んでいますか?過去6ヶ月の受注データを見ると、IT・SaaSと金融の受注率が高いので、まずこの2業種に絞ってリストを作り直してみましょう。架電数を減らしても、正しいターゲットに当たれば商談数は増えるはずです。」
FSメンバーへの共有
「ISのKPIをアポ数からIS貢献勝率に変更します。これはISの評価をFSの受注数と連動させることで、IS・FSが同じゴールを向く設計です。ISメンバーには『FSが勝てる商談を渡すことがミッション』と伝えています。質の低いアポが減るはずですので、気になる点があればすぐに共有してください。」
経営会議での報告
「ISのKPIを架電数からコンタクト率・商談化率・IS貢献勝率の3指標に変更しました。これによりメンバーの疲弊が軽減され、FSとの連携品質も向上しています。来期はターゲット適合率を追加して、活動の方向性も定量管理する予定です。」
3. なぜこの3指標なのか:選定理由と計算式
選定理由
ISのKPI設計で重要なのは「活動量」「活動の質」「活動の方向性」の3軸を分けて測ることです。
- コンタクト率×商談化率 → 活動の質(誰に・どう当たるか)
- IS貢献勝率 → 活動の成果(FSに貢献できているか)
- ターゲット適合率 → 活動の方向性(正しい相手に当たっているか)
この3軸が揃うと、メンバーへの指導が「もっと電話しろ」から「このターゲットにこのトークで当たれ」という具体的なアクションに変わります。
相関係数の活用
商談化率とIS貢献勝率の相関係数を計算すると、データが蓄積されるにつれて「どの指標を改善すると受注が増えるか」が見えてきます。
今回の5名のデータで計算すると r ≈ 0.91 と強い正の相関が出ます。商談化率を改善することがIS貢献勝率の改善につながるという仮説を、データが支持しています。
よくある誤解
「IS貢献勝率はISのせいだけじゃない。FSのトーク力も関係する」という意見があります。その通りです。IS貢献勝率はISとFSの共同指標として捉えるべきで、低い場合はISのアポ品質とFSの提案力の両方を検証する必要があります。
また「ターゲット適合率を上げると、母数が減って商談数が減る」という懸念もあります。短期的には減る可能性がありますが、IS貢献勝率が上がれば同じ商談数でも受注数が増えます。量を減らして質を上げる移行期間は、メンバーへの丁寧な説明が必要です。
4. 生成AIとの対話例:このプロンプトで誰でも同じ分析ができます
実際にこの分析をする際、生成AIに以下のように依頼すると、計算と解釈をまとめて出力してくれます。
あなたは営業データ分析の専門家です。 以下はISチーム5名のデータです。 メンバー / 架電数 / コンタクト数 / 商談数 / IS渡し案件数 / FS受注数: A: 200, 60, 12, 12, 3 B: 150, 75, 18, 18, 7 C: 180, 45, 13, 13, 5 D: 220, 55, 8, 8, 1 E: 160, 72, 20, 20, 9 以下を行ってください。 1. 各メンバーのコンタクト率・商談化率・IS貢献勝率を計算する 2. 商談化率とIS貢献勝率の相関係数を計算して関係を解釈する 3. 各メンバーの最優先改善ポイントを特定する 4. ISのKPIを架電数・アポ数から3指標に移行する際の、メンバーへの説明文を作成する 5. FSとISの関係改善のために、マネジャーが取るべきアクションを提案する 出力は、営業マネジャーがそのまま1on1や会議前に読めるよう、簡潔な日本語でまとめてください。
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