システムを「外注」するときに読む本 の書影

システムを「外注」するときに読む本

細川義洋

要望は全部聞いた。それが納品後に揉める。発注側が手放せない範囲はどこかを扱う論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 開発を含む案件で納品後に揉める
  • 顧客側の体制が弱い
  • 契約と範囲の線引きに迷う

−おすすめしない人

  • 開発の内部プロセスを学びたい
  • 自社開発のみで外注がない

著者について

細川義洋

元・システム開発紛争の調停委員

経歴
日本アイ・ビー・エム → 政府のIT調達支援、システム開発紛争の調停委員
実績
揉めた案件を第三者として数多く見てきた立場から執筆

ダイヤモンド社 / 2017年6月

目的

顧客の要望は全部聞いた。できる限り応えた。それでも納品後に「これでは使えない」と言われる。

技術の問題ではなく、業務をどうしたいかを誰も決めていなかったことが多い。本書を読む目的は、発注側が手放せない仕事の範囲を理解することにある。

論点1 業務のあるべき姿は、外に出せない

任せきる 発注者 … 予算と期日を伝える ベンダー … 業務の正解も 決めることになる 揉めるのは納品後 発注者が担う範囲を持つ 発注者 … 業務のあるべき姿 何を優先するか / 誰が決めるか ベンダー … 作り方で応える 業務をどうしたいかは、外に出せない仕事 営業の立場では、ここを顧客に持たせられるかが効く
発注者が任せきる場合と、自ら担う範囲を持つ場合。

本書は紛争の調停に携わった立場から、揉める案件の構図を示す。多くは発注側が業務の正解までベンダーに決めさせている。

  • 任せきる … ベンダーが業務も決める。揉めるのは納品後
  • 範囲を持つ … 何を優先するか、誰が決めるかは発注側

営業の立場では、ここを顧客に持たせられるかが効く。全部こちらで決めますと引き受けた案件は、あとで必ず戻ってくる。

いちこ

いちこ

「お任せします」と言われたら、嬉しく感じていました。
シュン

シュン

嬉しいけど危ないんだ。決める人がいない状態を預かったことになるからね。

論点2 断るのではなく、交換条件にする

その場で飲む 「これも入れて」 「やります」 期日も金額も変わらない どこかが削られる 影響を示して判断に戻す 「これも入れて」 期日 +2週 / 費用 +X or 別の機能を後倒し 顧客が選ぶ形にする 断るのではなく、交換条件にして相手の判断に戻す
追加要望をその場で飲む流れと、影響を示して判断に戻す流れ。

追加要望をその場で飲むと、期日も金額も変わらないままどこかが削られる。本書が勧めるのは影響を示して相手の判断に戻すことだ。

  • その場で飲む … 品質かスコープが静かに落ちる
  • 影響を示す … 期日+2週か、別の機能を後倒しか。顧客が選ぶ
「これも入れて」と言われたとき、断るか飲むかの二択で考えていないか。三つ目は、交換条件にして戻すこと。

論点3 記録は、決まっていないことを可視化する道具

口頭で合意した 「あの時こう言った」 「そうは聞いていない」 立場の強い側の記憶が通る 議事録として残した 決めたこと決めていないこと次に誰が何をするか 記録は守りではなく、決まっていないことを可視化する道具 送った議事録に返信がない論点が、次に揉める場所
口頭の合意だけの場合と、議事録として残している場合。

口頭の合意は「そうは聞いていない」で崩れ、立場の強い側の記憶が通る。だが本書の記録の使い方は守りではない。

  • 決めたこと / 決めていないこと
  • 次に誰が何をするか … 送って返信がない論点が、次に揉める場所

未決事項を一覧で扱う手順は プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本 のほうが詳しい。

いちこ

いちこ

議事録は、書いて送って終わりにしていました。
シュン

シュン

返信が来ない項目を見るのが本番だよ。そこが合意できていない場所なんだ。

この本の限界と、次に読む本

発注者向けに書かれているため、受注側の読者は立場を置き換えて読む必要がある。それが逆に、顧客が何を気にしているかの地図として使える。開発側の論理なら エンジニアリング組織論への招待 が補いになる。

Amazonで見る Amazonのアソシエイトとして、SaleStats Lab は適格販売により収入を得ています。

発注者の視点のほかの本