要望は全部聞いた。それが納品後に揉める。発注側が手放せない範囲はどこかを扱う論点を3つ紹介する。
✓お勧めする人
- 開発を含む案件で納品後に揉める
- 顧客側の体制が弱い
- 契約と範囲の線引きに迷う
−おすすめしない人
- 開発の内部プロセスを学びたい
- 自社開発のみで外注がない
著者について
細川義洋
元・システム開発紛争の調停委員
- 経歴
- 日本アイ・ビー・エム → 政府のIT調達支援、システム開発紛争の調停委員
- 実績
- 揉めた案件を第三者として数多く見てきた立場から執筆
目的
顧客の要望は全部聞いた。できる限り応えた。それでも納品後に「これでは使えない」と言われる。
技術の問題ではなく、業務をどうしたいかを誰も決めていなかったことが多い。本書を読む目的は、発注側が手放せない仕事の範囲を理解することにある。
論点1 業務のあるべき姿は、外に出せない
本書は紛争の調停に携わった立場から、揉める案件の構図を示す。多くは発注側が業務の正解までベンダーに決めさせている。
- 任せきる … ベンダーが業務も決める。揉めるのは納品後
- 範囲を持つ … 何を優先するか、誰が決めるかは発注側
営業の立場では、ここを顧客に持たせられるかが効く。全部こちらで決めますと引き受けた案件は、あとで必ず戻ってくる。
いちこ
「お任せします」と言われたら、嬉しく感じていました。
シュン
嬉しいけど危ないんだ。決める人がいない状態を預かったことになるからね。
論点2 断るのではなく、交換条件にする
追加要望をその場で飲むと、期日も金額も変わらないままどこかが削られる。本書が勧めるのは影響を示して相手の判断に戻すことだ。
- その場で飲む … 品質かスコープが静かに落ちる
- 影響を示す … 期日+2週か、別の機能を後倒しか。顧客が選ぶ
「これも入れて」と言われたとき、断るか飲むかの二択で考えていないか。三つ目は、交換条件にして戻すこと。
論点3 記録は、決まっていないことを可視化する道具
口頭の合意は「そうは聞いていない」で崩れ、立場の強い側の記憶が通る。だが本書の記録の使い方は守りではない。
- 決めたこと / 決めていないこと
- 次に誰が何をするか … 送って返信がない論点が、次に揉める場所
未決事項を一覧で扱う手順は プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本 のほうが詳しい。
いちこ
議事録は、書いて送って終わりにしていました。
シュン
返信が来ない項目を見るのが本番だよ。そこが合意できていない場所なんだ。
この本の限界と、次に読む本
発注者向けに書かれているため、受注側の読者は立場を置き換えて読む必要がある。それが逆に、顧客が何を気にしているかの地図として使える。開発側の論理なら エンジニアリング組織論への招待 が補いになる。
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発注者の視点のほかの本
- なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 細川義洋