良い提案なのに通らない。逆に、中身が薄いのに通る提案がある。その差を説明する原理を、論点3つに絞って紹介する。
✓お勧めする人
- 提案が通らない理由を言語化したい
- 若手に伝え方を教えたい
- 購買側として判断を誤りたくない
−おすすめしない人
- BtoBに特化した手法を探している
- すぐ使える台本がほしい
著者について
ロバート・B・チャルディーニ
アリゾナ州立大学 名誉教授
- 経歴
- 社会心理学者として承諾誘導の研究を長年続けてきた
- 実績
- 人が「イエス」と言う仕組みを6つの原理として整理した
目的
入念に作った提案が通らない。一方で、競合のあっさりした提案が選ばれる。中身で負けた気がしないのに、結果だけが負けている。
差がついているのは内容ではなく、相手がどう判断しているかの部分だ。本書を読む目的は、人が承諾する仕組みを知って、伝え方を設計できるようにすることにある。
論点1 相手はいつも、じっくり考えているわけではない
本書の前提は、人は情報が多すぎる環境でいちいち考えていられないということにある。だから手がかりに頼った反射的な判断をする。
- じっくり考える … 時間と関心があるとき。提案の中身が効く
- 反射的に反応する … 忙しい・情報が多い・疲れているとき。手がかりが効く
商談相手の多くは後者の状態にいる。これは相手が怠慢なのではなく、人間の処理能力の問題だ。だからこそ、どんな手がかりを渡すかが提案の一部になる。
いちこ
シュン
論点2 大きなYESは、小さなYESの先にある
本書が挙げる原理のうち、BtoB営業で最も効くのが一貫性だ。人は自分が一度言ったことや取った行動と、矛盾しないように振る舞う。
いきなり稟議を求めるのではなく、小さな同意を積み重ねる。「課題はここですよね」と相手に言葉にしてもらった時点で、提案は相手の中で自分事になっている。
この「相手に語らせる」という方向は、ニール・ラッカム『SPIN営業術』の質問設計と同じところを向いている。
論点3 原理は、使うだけでなく守りにも要る
本書には倫理の話が繰り返し出てくる。原理そのものは中立で、価値のあるものに使えば誠実な仕事、ないものに使えば操作になる。
もうひとつ実務的なのが、守りの側だ。営業マネージャーも、仕入先や競合の提案を受ける立場にある。自分の判断が中身ではなく手がかりに引きずられていないかを点検できる。
いちこ
シュン
この本の限界と、次に読む本
事例は日常生活や小売が中心で、BtoBの商談にそのまま当てはまる形では書かれていない。翻訳も硬めで厚い。BtoBの商談に直接効く形がほしいなら、高橋浩一『無敗営業』のほうが近い。
影響力のほかの本
- 人を動かす D・カーネギー
- 影響力の武器 実践編 N・J・ゴールドスタイン・S・J・マーティン・R・B・チャルディーニ