人月の神話 の書影

人月の神話

狼人間を撃つ銀の弾はない

フレデリック・P・ブルックス

遅れているから人を増やす。その判断がなぜ裏目に出るのかを扱う論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 開発の遅れを顧客に説明する
  • 増員で解決しようとしている
  • 見積もりの前提を知りたい

−おすすめしない人

  • すぐ使える手順が欲しい
  • 開発に関わらない

著者について

フレデリック・P・ブルックス

元・IBM OS開発責任者

経歴
IBMで大規模OSの開発を率いた
実績
その経験からソフトウェア開発の本質的な難しさを論じ、1975年の原著は現在も参照され続けている

ピアソン・エデュケーション / 2002年11月(20周年増訂版)

目的

開発が遅れている。顧客にも説明がつかない。人を追加してもらった。さらに遅れた。

追加した人が悪いのではなく、人数と期間を交換できない種類の仕事だった。本書を読む目的は、その区別を持つことにある。

論点1 人数が2倍になると、やりとりは5倍になる

3人のとき やりとりの経路 3本 6人に増やすと やりとりの経路 15本 人数が2倍になると、やりとりは5倍になる 遅れている案件に人を足すと、さらに遅れる
人を追加すると、伝達の経路が増える。

3人なら経路は3本。6人なら15本になる。人数の増え方より、やりとりの増え方のほうが速い。

加えて、追加された人は状況を理解するまで既存メンバーの時間を使う。だから遅れている案件に人を足すと、さらに遅れる。

いちこ

いちこ

でも人が足りないときは、どうすればいいんでしょう。
シュン

シュン

範囲を削るか、期日を動かすかだね。人を足すのは、実は一番効かない選択肢なんだ。

論点2 人月で見積もれるのは、分けられる仕事だけ

分けられる仕事 1000件のデータ入力 人数を倍にすれば半分の時間 人月で計算できる 分けられない仕事 設計を考える / 要件をまとめる 人数を倍にしても縮まない 人月は意味を持たない 「何人月」で見積もれるのは、分けられる仕事だけ 顧客に人数で説明すると、縮められる前提が共有されてしまう
人数で短縮できる仕事と、できない仕事。
  • 分けられる … 1000件のデータ入力。人数を倍にすれば半分の時間
  • 分けられない … 設計を考える、要件をまとめる。倍にしても縮まない

顧客に人数で説明すると、縮められる前提が共有されてしまう。「3人月」と言った瞬間、「6人なら半月」と思われる。

論点3 道具が進むほど、残るのは「何を作るか」

作業の難しさ 手で書く / 繰り返す / 間違える 道具で減らせる 実際に大きく減ってきた 本質的な難しさ 何を作るべきかを決める 道具では減らない 人が決めるしかない 道具が進むほど、残るのは「何を作るか」の問題になる 営業が持ち帰る顧客の困りごとは、まさにここに効く
作業の難しさと、本質的な難しさ。

手で書く、繰り返す、間違える。こうした作業の難しさは道具で大きく減ってきた。

だが何を作るべきかを決める難しさは、道具では減らない。営業が持ち帰る顧客の困りごとは、まさにここに効く。

いちこ

いちこ

技術が進んでも、楽にならない部分があるんですね。
シュン

シュン

むしろそこだけが残るんだ。だから「何に困ってるか」を持ち帰る仕事の価値は下がらないんだよ。

この本の限界と、次に読む本

1975年の原著で、事例は当時の大型計算機が舞台になる。具体例はほぼ参考にならない。構造の指摘だけを取る読み方になる。期日の交渉なら アジャイルサムライ、不確実性の扱いなら エンジニアリング組織論への招待 が隣に並ぶ。

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