競争の戦略 の書影

競争の戦略

M・E・ポーター

努力しても利益が出ない業界がある。構造として見るための論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 業界ごとの利益差の理由を知りたい
  • 方針を作る立場
  • 値引き圧力の出どころを探している

−おすすめしない人

  • すぐ使える営業手法が欲しい
  • 短く読める戦略書を探している

著者について

M・E・ポーター

ハーバード・ビジネス・スクール 教授

経歴
業界構造の分析と競争戦略の研究で経営学に大きな影響を与えた
実績
5つの力や3つの基本戦略の出どころとなった

ダイヤモンド社 / 1995年3月(新訂)

目的

同じだけ動いているのに、業界によって利益率がまったく違う。自社でも、ある商材だけがどうしても安くしか売れない。

営業の力量ではなく、構造のほうが効いている。本書を読む目的は、その構造に名前をつけて見分けることにある。

論点1 利益が出にくいのは、5つのどれかが強いから

既存企業どうしの 競争 新規参入の脅威 代替品の脅威 買い手の交渉力 売り手の交渉力 利益が出にくい業界では、努力の前に構造が効いている 5つのうちどれが強いかで、打てる手が変わる
業界の収益性を左右する5つの力。

本書が示す枠組みは、業界の利益を5つの力で説明する。新規参入、代替品、買い手の交渉力、売り手の交渉力、既存企業どうしの競争だ。

  • 買い手の交渉力が強い … 値引き圧力が構造として続く
  • 新規参入が容易 … 単価が下がり続ける

どれが強いかで打てる手が変わる。努力の前に、どの力に押されているかを特定する。

いちこ

いちこ

値引き圧力は、交渉が弱いせいだと思っていました。
シュン

シュン

交渉もあるけどね。買い手が集中している業界だと、構造として下がるんだ。

論点2 「良いものを安く」は左下に落ちる

差別化の度合い コストの低さ 差別化で勝つ 高くても選ばれる理由を作る 両方取れる例は稀 どちらでもない 価格でも理由でも負ける コストで勝つ 安く作れる仕組みを持つ 「良いものを安く」は、たいてい左下に落ちる
コスト優位と差別化の二軸。中途半端な位置が不利になる。

本書は基本戦略を、コストで勝つか差別化で勝つかに分ける。両方取れる例は稀だ。

  • 差別化で勝つ … 高くても選ばれる理由を作る
  • コストで勝つ … 安く作れる仕組みを持つ
  • どちらでもない … 価格でも理由でも負ける

「良いものを安く」は方針として聞こえがいいが、どちらの軸も取れていない位置を指していることが多い。

論点3 強みは工程単位で特定する

調達製造物流営業保守 利益 ここで差がついている 自社が勝っているのは製品ではなく 提案から導入までの速さ、かもしれない 「うちは品質が強い」で止まると どの工程の話か分からない 強みは会社単位ではなく、工程単位で特定する
活動を工程に分解し、差がついている工程を特定する。

「うちは品質が強い」で止まると、どの工程の話か分からない。本書の価値連鎖は、活動を分解して差の在り処を探す道具だ。

自社が勝っているのは製品そのものではなく、提案から導入までの速さかもしれない。工程まで降りると、守るべき場所と捨てる場所が決まる。

自社の勝ちパターンを、工程名を使って1文で書いてみる。書けないなら、まだ強みが特定できていない。
いちこ

いちこ

強みを聞かれると、いつも「品質と対応力」と答えていました。
シュン

シュン

どの工程の対応力か、まで言えると提案が変わるよ。

この本の限界と、次に読む本

1980年の原著で、記述は重く事例も古い。枠組みの出どころとして要点だけ押さえる読み方が現実的。戦略の組み立て方なら 良い戦略、悪い戦略、日本企業の文脈なら ストーリーとしての競争戦略 のほうが読みやすい。

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