ストーリーとしての競争戦略 の書影

ストーリーとしての競争戦略

優れた戦略の条件

楠木建

施策を並べても戦略にはならない。前の一手が次の一手の理由になっている状態をどう作るか。本書が解いている論点を3つに絞って紹介する。

✓お勧めする人

  • 戦略が施策の羅列になっている
  • 良さそうな案を断れない
  • 競合に真似されてすぐ横並びになる

−おすすめしない人

  • すぐ使えるフレームワークを探している
  • 時間がない(500ページ超の大著)

著者について

楠木建

一橋ビジネススクール 教授

経歴
競争戦略と企業の長期的な成長を研究してきた
実績
戦略を個別の施策ではなく、つながった物語として捉える見方を提示した

東洋経済新報社 / 2010年5月

目的

期初の戦略資料。「単価を上げる」「新規チャネルを開く」「解約率を下げる」。どれも正しい。それなのに、どれから手をつけるかを聞かれると誰も答えられない。

それは戦略ではなく、やりたいことの一覧だからだ。本書を読む目的は、施策のリストを筋書きに変えることにある。

論点1 戦略は箇条書きではなく、つながった筋書き

施策の箇条書き つながった筋書き 単価を上げる新規チャネルを開く解約率を下げる人員を増やす どれも正しいが、順番も理由もない 狭い顧客層に絞るその層に深く刺さる紹介が回りはじめる獲得費用が下がる 前の一手が、次の一手の理由になっている
項目が並んでいるだけの状態と、前の一手が次の理由になっている状態。

本書の立場は明快で、戦略とは静止画ではなく動画だという。個々の施策が正しいかではなく、施策どうしが因果でつながっているかを問う。

  • 並んでいるだけ … どれも正しいので、優先順位が決まらない
  • つながっている … 前の一手が効くから、次の一手が成立する

「狭い顧客層に絞る → その層に深く刺さる → 紹介が回る → 獲得費用が下がる」。この形になると、最初の一手を削った瞬間に後ろが崩れることが分かる。だから順番が決まる。

いちこ

いちこ

うちの戦略資料、完全に箇条書きでした…。
シュン

シュン

多いよ。見分け方は簡単で、「なぜこの順番か」を説明できるかどうかなんだ。

論点2 一見して損な一手が、中核になる

その一手だけを見ると ✕ 効率が悪い / 儲からない → 競合は真似しない 筋書き全体の中では ◎ 他の要素と噛み合って効く → 真似されないまま残る 模倣されない理由は、秘密にしているからではなく、部分だけ見ると損に見えるから
部分だけ取り出すと非合理に見えるが、筋書き全体では勝ち筋になっている。

本書で最も実務的なのが、筋書きの中核になる一手は単体で見ると非合理に見えるという指摘だ。

効率が悪い、儲からない、面倒。そう見えるからこそ競合は真似しない。結果として、その一手が守りになる。逆に、誰が見ても得だと分かる施策は、すぐ横並びになる。

ただし「非合理に見えるからこの一手は正しい」は成立しない。全体の筋書きの中で、なぜそれが効くのかを説明できて初めて中核になる。説明できないなら、ただ非合理なだけである。

論点3 筋書きがあると、良さそうな案を断れる

自社の筋書き(なぜ勝てるのか) 大型案件の個別対応 やらない 特定業種への集中 やる 値引きでの新規獲得 やらない 筋書きがあると、良さそうな案を断れる 戦略が機能しているかは、何を断れたかで分かる
筋書きに照らして、やる・やらないが決まる。

筋書きの効用は、決断が速くなることにある。持ち込まれた案を、筋書きに合うかどうかで判断できるからだ。

  • 筋書きに合う → やる
  • 単体では魅力的だが筋書きから外れる → 断る

戦略が機能しているかは、何を始めたかより何を断れたかで分かる。断れていないなら、筋書きがまだ言語化されていない。

いちこ

いちこ

断る理由が持てるのは助かります。
シュン

シュン

そう。断る基準がないと、毎回その場の勢いで決めることになる。それが一番疲れるんだ。

この本の限界と、次に読む本

フレームワークの当てはめを期待すると肩透かしになる。実在企業の筋書きを追う本なので、読む時間はかかるが、読後に残るのは型ではなく見方である。

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