手応えのあった商談が決まらない。売り手と買い手で何がズレているのかを、買い手調査から解き明かす本。論点を3つ紹介する。
✓お勧めする人
- 手応えと結果が合わない
- コンペで負けることが多い
- 日本のBtoB商材を扱っている
−おすすめしない人
- 営業理論の原典を読みたい
- 単価が小さく即決が中心
著者について
高橋浩一
TORiX 代表
- 経歴
- コンペでの勝率を題材にした営業支援を手がけてきた
- 実績
- 商談で聞けていない状態を、質問の型と準備で埋める方法を体系化した
目的
商談は盛り上がった。要望も聞けた。提案も刺さったはずだ。それなのに結果は失注で、理由は「他社さんに決まりました」。
本書の出発点は、売り手の手応えと買い手の評価がずれているという事実にある。読む目的は、そのズレがどこで生まれるのかを知ることだ。
論点1 「いい商談だった」ときほど、ズレは見えていない
著者は買い手側への調査をもとに、両者の認識の差を示す。売り手が「要望は正確に聞けた」と思っているとき、買い手は「本当の事情は話していない」と考えていることがある。
- 売り手 … 提案は的を射ている。あとは価格の問題
- 買い手 … どこも似た提案に見える。決め手がないので先送り
手応えは、自分がうまく話せたかどうかで感じるものだ。相手がどう受け取ったかとは別の話になる。
いちこ
手応えがあった商談ほど落とすことがあります…。
シュン
自分がよく喋れた商談は、相手の話を聞けていないことが多いんだ。
論点2 3つの軸が埋まっていない商談は、進んでいない
本書が示す確認の軸は単純だ。何を解決したいのか、誰が決めるのか、いつまでにやるのか。
- 何を … 課題と、その優先度。他の課題より上かどうか
- 誰が … 決裁者と、反対しそうな人
- いつまでに … 動く理由になっている期限
商談後にこの3つを埋めてみる。埋まらない欄が、次の商談で聞くことになる。「いい感じでした」という報告は、これで具体化できる。
3つが揃っているかで案件の確度を見ると、ヨミの精度も上がる。申告と実績の較正は ヨミ・着地見込みは当たっているか に。
論点3 どこまで聞けたかが、信頼の度合いを表す
同じ質問をしても、返ってくる情報の深さは相手によって違う。本書はこれを技術の差ではなく信頼の度合いとして捉える。
提案依頼書に書いてあることしか聞けていないなら、競合も同じ情報を持っている。差がつくのは、社内の力関係や予算の裏側といった、書かれていない部分を話してもらえるかどうかだ。
いちこ
質問の仕方の問題だと思っていました。
シュン
半分はそう。でも同じ質問でも、信頼がない相手には本当のことを言わないよね。順番があるんだ。
この本の限界と、次に読む本
買い手調査という裏づけを持ちながら、日本のBtoB現場に合わせて書かれているのが強みになる。質問技術の原理から辿りたいなら、ニール・ラッカム『SPIN営業術』が元にあたる。組織として仕組みにするなら、同じ著者の『無敗営業 チーム戦略』が続編になる。
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ヒアリングのほかの本
- 大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 ニール・ラッカム
- LISTEN ケイト・マーフィ