THE MODEL の書影

THE MODEL

マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

福田康隆

「今月は未達です」「で、どうする?」「訪問件数を増やします」。この会話を終わらせるために、本書が解いている論点を3つに絞って紹介する。

✓お勧めする人

  • 分業体制をこれから作る
  • 作ったが機能していない
  • KPIを工程単位で設計し直したい

−おすすめしない人

  • 少人数で一人が全工程を持つ
  • 単発・高額・紹介中心の商売

著者について

福田康隆

元・マルケト日本法人 代表取締役社長

経歴
アドビ システムズ → セールスフォース・ドットコム日本法人 → マルケト日本法人 社長
実績
セールスフォース時代に分業型の営業プロセスの立ち上げに関与

翔泳社 / 2019年1月

目的

月末の数字報告。未達。上司が「で、どうするんだ」と聞き、マネージャーが「訪問件数を積み増します」と答える。誰も納得しないまま会議が終わる——この繰り返しを止めることが、本書を読む目的になる。

止まらない理由は、気合ではなく問いの立て方にある。「売上が足りない」は粗すぎて、「もっと頑張る」としか答えられない。本書はこの問いを分解する道具を渡してくる。ここでは実務で効く論点を3つ抜き出す。

論点1 「売上が足りない」をどう分解するか

目標から逆算 リード 獲得した見込み客 1,000件 × 商談化率 10% 商談 FSが引き受けた案件 100件 × 受注率 20% 受注 成約 20件 × 平均単価 500万円 売上 1億円 実績は上から下へ流れ、必要数は下から上へ逆算する
四半期1億円・平均単価500万円の場合。実績は上から下へ流れるが、計画は下から上へ逆算する。

売上を結果の一点として眺めるのをやめ、リード数 × 商談化率 × 受注率 × 平均単価 の掛け算として扱う。式にした瞬間、問いが「どの項が落ちたのか」に変わる。

逆算もできる。1億円・単価500万円なら受注20件、受注率20%なら商談100件、商談化率10%ならリード1,000件。数字が並ぶと、不足の性質が変わって見える。

  • リードが600件しかない → 打つ手は営業の叱咤ではなく供給側
  • リードは潤沢、受注率だけ低い → 提案の問題として扱える
いちこ

いちこ

「頑張ります」以外の答えが、やっと出せそうです。
シュン

シュン

問いが大きすぎると誰も分解できないんだ。まず問いを小さくするところから始めるよ。

論点2 どの工程から手をつけるか

1割改善したときの売上への寄与 それに必要な労力 リード数 +10% 自社の事情で埋める 商談化率 +10% 自社の事情で埋める 受注率 +10% 自社の事情で埋める 平均単価 +10% 自社の事情で埋める 寄与はすべて同じ。だから比べるのは右側だけでいい。
どの項を1割改善しても売上への寄与は同じ。違うのは必要な労力だけ。

分解すると次に迷うのが、どこから触るかだ。ここで効く性質がある。どの工程を1割改善しても、売上への寄与は同じ10%。違うのは労力だけだ。リードの1割増には広告費か人員が要るが、単価の1割は上位プランへの誘導で取れることがある。

だから着手順は次の2点で決まる。

  • 他工程や同業と比べて、不自然に低い項があるか
  • その項を動かすのに、どれだけの労力がかかるか

全工程を均等に改善しようとすると、最も動かしにくい場所に力を使うことになる。

論点3 なぜ数字が合わなくなるのか

問い合わせ アポ設定 初回面談 決裁者同席 受注 インサイドセールスが数える「商談」 100件 FSが数える「商談」 40件 同じ月・同じ案件群でも、数え始めが違えば通過率は別の数字になる 商談化率 10%(IS基準) / 4%(FS基準) — どちらも「正しい」ので、会議は数字の擦り合わせに消える
数え始めが違うだけで、同じ案件群から2つの通過率が出てしまう。

表を作って最初にぶつかるのが、部署で数字が合わないことだ。原因は能力でも集計ミスでもなく、工程をまたいで言葉の意味がずれていることにある。ISは「アポが取れた」を、FSは「決裁者が出てきた」を商談として数える。

ダッシュボードを作るのは最後でいい。定義を揃える前に可視化すると、精緻な画面と、誰も信じていない数字だけが残る。

揺れているかは数字でも判る。通過率のばらつきが大きい工程は、実力ではなく数え方が揺れている可能性が高い(分散・標準偏差)。置いたKPIが成果の原因かどうかは別問題として こちら に。

いちこ

いちこ

3つとも、明日から手を動かせそうです。
シュン

シュン

ここまでが考え方の話。組織の形にすると引き渡し基準や評価という別の問題が出る。そこは実際に回した人の記録を読んだほうが早いよ。

この本の限界と、次に読む本

後者は、前提になるリード量と案件数がないと分業の引き継ぎコストだけが乗る。平易で図表が多く3〜4時間。工程単位の深掘りが目的なら、茂野明彦『インサイドセールス』のほうが直接的だ。

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自社の数字で確かめる

この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。

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