ハーバード流交渉術 の書影

ハーバード流交渉術

ロジャー・フィッシャー・ウィリアム・ユーリー

値引き要求に、値引きで答えてしまう。主張の裏にある関心を見て、別の答えを作るための論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 値引き要求に毎回押し切られる
  • 取引を継続する相手と交渉する
  • 調達側とも交渉する

−おすすめしない人

  • 日本のBtoB商談に特化した型がほしい
  • 一度きりの取引が中心

著者について

ロジャー・フィッシャー・ウィリアム・ユーリー

ハーバード大学交渉学研究所

経歴
同研究所で交渉の研究と教育に携わってきた
実績
立場でなく利害に着目する原則立脚型交渉を定式化した

TBSブリタニカ / 1998年(新版)

目的

「もう10%下げてほしい」と言われる。社内で稟議を回し、値引きして通す。次の案件でも同じことが起きる。

値引き以外の答えを作れていない。本書を読む目的は、主張の裏にある関心を見て、別の合意を設計できるようになることにある。

論点1 主張ではなく、その裏の関心を見る

表に出る主張 「もう10%下げてほしい」 その裏にある関心 今期の予算に収めたい 社内で値引き交渉をした実績が要る 他社と比べて損をしたくない 関心が違えば、値引き以外の答えが出てくる
同じ「下げてほしい」でも、理由が違えば答えも違う。

本書の中心は、相手の主張と、その裏にある関心を分けることにある。主張は一つでも、関心は人によって違う。

  • 今期の予算に収めたい → 支払い時期をずらすで解けることがある
  • 社内で交渉した実績が要る → 値引き以外の付帯条件でも成立する
  • 他社より損をしたくない → 比較の根拠を示せば収まることがある

関心を聞かずに主張へ答えると、値引きしか選択肢がなくなる。

いちこ

いちこ

「なぜ下げたいのか」は聞いていませんでした。
シュン

シュン

そこを聞くと、お金以外で解ける場合があるんだ。聞かないと値引き一択になる。

論点2 交渉力は、交渉の外側で決まる

代替案がない この商談を落とせない 相手もそれを察している → 譲り続けることになる 代替案がある 他に進んでいる案件がある 断っても困らない → 条件を保てる 交渉力は話し方ではなく、交渉の外側にある選択肢の数で決まる
まとまらなかった場合の選択肢があるかどうかで、譲り方が変わる。

本書が重視するのが、合意できなかった場合の代替案だ。これを持っているかどうかで、同じ会話でも結果が変わる。

  • 代替案がない … この商談を落とせない。相手もそれを察している
  • 代替案がある … 断っても困らないので、条件を保てる

つまり交渉力は話し方の技術ではなく、パイプラインの状態で決まる。月末に案件が1本しかない状態では、何を学んでも押し切られる。

交渉の準備は、話法の練習ではなく代替案づくりから始まる。他の案件を進めておくことが、目の前の交渉の条件を守る。

論点3 力ではなく、基準で決める

力で決める 「そこを何とか」 「上司に掛け合います」 押し合いになり、遺恨が残る 基準で決める 「何を基準に決めましょうか」 相場、他社事例、算定根拠 合意しても角が立たない 基準の議論に移せると、譲っても「負けた」にならない
押し合いにせず、何を基準に決めるかの議論に移す。

押し合いになると、譲ったほうに遺恨が残る。本書が勧めるのは、客観的な基準に議論を移すことだ。

「そこを何とか」ではなく「何を基準に決めましょうか」と置く。相場、他社事例、算定根拠。基準の議論になれば、譲っても負けたことにはならない。

いちこ

いちこ

基準の話にすると、感情的にならずに済みますね。
シュン

シュン

そう。関係を続ける相手なら、ここが効く。勝ち負けにしないほうが次につながるんだ。

この本の限界と、次に読む本

原書は1980年代のもので事例は古く、翻訳も硬い。交渉の場面に限らず商談全体を設計したいなら、ニール・ラッカム『SPIN営業術』のほうが近い。

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