値引き要求に、値引きで答えてしまう。主張の裏にある関心を見て、別の答えを作るための論点を3つ紹介する。
✓お勧めする人
- 値引き要求に毎回押し切られる
- 取引を継続する相手と交渉する
- 調達側とも交渉する
−おすすめしない人
- 日本のBtoB商談に特化した型がほしい
- 一度きりの取引が中心
著者について
ロジャー・フィッシャー・ウィリアム・ユーリー
ハーバード大学交渉学研究所
- 経歴
- 同研究所で交渉の研究と教育に携わってきた
- 実績
- 立場でなく利害に着目する原則立脚型交渉を定式化した
目的
「もう10%下げてほしい」と言われる。社内で稟議を回し、値引きして通す。次の案件でも同じことが起きる。
値引き以外の答えを作れていない。本書を読む目的は、主張の裏にある関心を見て、別の合意を設計できるようになることにある。
論点1 主張ではなく、その裏の関心を見る
本書の中心は、相手の主張と、その裏にある関心を分けることにある。主張は一つでも、関心は人によって違う。
- 今期の予算に収めたい → 支払い時期をずらすで解けることがある
- 社内で交渉した実績が要る → 値引き以外の付帯条件でも成立する
- 他社より損をしたくない → 比較の根拠を示せば収まることがある
関心を聞かずに主張へ答えると、値引きしか選択肢がなくなる。
いちこ
「なぜ下げたいのか」は聞いていませんでした。
シュン
そこを聞くと、お金以外で解ける場合があるんだ。聞かないと値引き一択になる。
論点2 交渉力は、交渉の外側で決まる
本書が重視するのが、合意できなかった場合の代替案だ。これを持っているかどうかで、同じ会話でも結果が変わる。
- 代替案がない … この商談を落とせない。相手もそれを察している
- 代替案がある … 断っても困らないので、条件を保てる
つまり交渉力は話し方の技術ではなく、パイプラインの状態で決まる。月末に案件が1本しかない状態では、何を学んでも押し切られる。
交渉の準備は、話法の練習ではなく代替案づくりから始まる。他の案件を進めておくことが、目の前の交渉の条件を守る。
論点3 力ではなく、基準で決める
押し合いになると、譲ったほうに遺恨が残る。本書が勧めるのは、客観的な基準に議論を移すことだ。
「そこを何とか」ではなく「何を基準に決めましょうか」と置く。相場、他社事例、算定根拠。基準の議論になれば、譲っても負けたことにはならない。
いちこ
基準の話にすると、感情的にならずに済みますね。
シュン
そう。関係を続ける相手なら、ここが効く。勝ち負けにしないほうが次につながるんだ。
この本の限界と、次に読む本
原書は1980年代のもので事例は古く、翻訳も硬い。交渉の場面に限らず商談全体を設計したいなら、ニール・ラッカム『SPIN営業術』のほうが近い。
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