交渉の達人 の書影

交渉の達人

いかに障害を克服し、すばらしい成果を手にするか

ディーパック・マルホトラ・マックス・ベイザーマン

値引きを求められ、応じるか断るかで考えてしまう。第三の手を出すための論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 値引き要求に二択で向き合っている
  • 大型案件の条件交渉をする
  • 社内調整が多い

−おすすめしない人

  • まず短い入門が欲しい
  • 交渉の場が少ない仕事

著者について

ディーパック・マルホトラ・マックス・ベイザーマン

ハーバード・ビジネス・スクール 教授

経歴
いずれも同校で交渉を専門に教えてきた
実績
同校の交渉講座に持ち込まれた難局の事例を集めて構成した

日本経済新聞出版社 / 2010年5月

目的

「あと10%下げてほしい」と言われた。応じれば利益が消える。断れば失注する。どちらも選びたくない。

技術の不足ではなく、二択で考えていることが問題になっている。本書を読む目的は、交渉を取り合いから交換に変える手を持つことにある。

論点1 1項目ずつ詰めると、全部が綱引きになる

1つずつ詰める 価格納期保守範囲支払条件 1項目ごとに取るか譲るかになり、全部が綱引きになる 束で出す 価格は譲れない納期は延ばせる保守は厚くできる支払は要相談 相手がどこを重く見ているかが見えて、交換が成立する
条件を1つずつ詰める交渉と、束で出す交渉。

価格、納期、保守範囲、支払条件。これを順に詰めると、1項目ごとに取るか譲るかになる。

  • 1つずつ … どの項目も綱引きになり、終盤に価格だけが残る
  • 束で出す … 相手がどこを重く見ているかが見えて、交換が成立する

「価格は譲れないが、納期は延ばせて保守は厚くできる」とまとめて出す。相手の優先順位が分かるのは、この形にしたあとだ。

いちこ

いちこ

一つずつ合意していくほうが丁寧だと思っていました。
シュン

シュン

丁寧なんだけど、交換の材料が毎回1つしかないんだよね。だから値段の話に落ちるんだ。

論点2 同じ要求が、理由ごとに別の問題になる

「あと10%下げてほしい」 なぜ? 予算の枠が決まっている 分割や期ずらしで解ける 社内で安く見せたい 別項目の値引き表示で解ける 他社見積と並べられた 比較軸を変えれば解ける 同じ「10%下げて」が、理由ごとに別の解き方になる 値引き以外の手が出てくるのは、理由を聞いたあとだけ
表明された立場の裏にある関心を掘り下げる。

本書が徹底するのが、立場ではなく関心を聞くことだ。「10%下げて」の理由は一つではない。

  • 予算の枠が決まっている … 分割や期ずらしで解ける
  • 社内で安く見せたい … 別項目の値引き表示で解ける
  • 他社見積と並べられた … 比較軸を変えれば解ける

値引き以外の手が出てくるのは、理由を聞いたあとだけだ。質問で状況を立ち上げる型は SPIN営業術 が詳しい。

論点3 撤退線は、交渉の前に決める

条件の良さ 撤退線 これ以下なら受けない 受けると損をする それでも受けてしまう範囲 合意できる範囲 ここで初めて条件を詰める価値が出る 撤退線は交渉の前に決める。その場で決めると必ず下がる
交渉前に代替案と撤退線を決めておく。

受けると損をする条件でも、その場では受けてしまう。本書が前提に置くのは事前に決めた撤退線だ。

交渉中に決めようとすると、必ず下がる。失注が怖くなる局面では判断が甘くなるからだ。先に線を引いておけば、合意できる範囲での交換に集中できる。

次の交渉の前に「これ以下なら受けない」を紙に1行書く。その場で思い出せる形にしておく。
いちこ

いちこ

失注するくらいなら受けてしまいます。
シュン

シュン

その気持ちになる前に決めるんだ。線が引いてあると、断るのが判断じゃなく確認になるよ。

この本の限界と、次に読む本

事例が多く分量もある。先に ハーバード流交渉術 で原則を押さえ、難局の対処として本書に進む順序が読みやすい。相手の社内合意を動かす視点なら 隠れたキーマンを探せ! が補いになる。

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