値引きを求められ、応じるか断るかで考えてしまう。第三の手を出すための論点を3つ紹介する。
✓お勧めする人
- 値引き要求に二択で向き合っている
- 大型案件の条件交渉をする
- 社内調整が多い
−おすすめしない人
- まず短い入門が欲しい
- 交渉の場が少ない仕事
著者について
ディーパック・マルホトラ・マックス・ベイザーマン
ハーバード・ビジネス・スクール 教授
- 経歴
- いずれも同校で交渉を専門に教えてきた
- 実績
- 同校の交渉講座に持ち込まれた難局の事例を集めて構成した
目的
「あと10%下げてほしい」と言われた。応じれば利益が消える。断れば失注する。どちらも選びたくない。
技術の不足ではなく、二択で考えていることが問題になっている。本書を読む目的は、交渉を取り合いから交換に変える手を持つことにある。
論点1 1項目ずつ詰めると、全部が綱引きになる
価格、納期、保守範囲、支払条件。これを順に詰めると、1項目ごとに取るか譲るかになる。
- 1つずつ … どの項目も綱引きになり、終盤に価格だけが残る
- 束で出す … 相手がどこを重く見ているかが見えて、交換が成立する
「価格は譲れないが、納期は延ばせて保守は厚くできる」とまとめて出す。相手の優先順位が分かるのは、この形にしたあとだ。
いちこ
一つずつ合意していくほうが丁寧だと思っていました。
シュン
丁寧なんだけど、交換の材料が毎回1つしかないんだよね。だから値段の話に落ちるんだ。
論点2 同じ要求が、理由ごとに別の問題になる
本書が徹底するのが、立場ではなく関心を聞くことだ。「10%下げて」の理由は一つではない。
- 予算の枠が決まっている … 分割や期ずらしで解ける
- 社内で安く見せたい … 別項目の値引き表示で解ける
- 他社見積と並べられた … 比較軸を変えれば解ける
値引き以外の手が出てくるのは、理由を聞いたあとだけだ。質問で状況を立ち上げる型は SPIN営業術 が詳しい。
論点3 撤退線は、交渉の前に決める
受けると損をする条件でも、その場では受けてしまう。本書が前提に置くのは事前に決めた撤退線だ。
交渉中に決めようとすると、必ず下がる。失注が怖くなる局面では判断が甘くなるからだ。先に線を引いておけば、合意できる範囲での交換に集中できる。
次の交渉の前に「これ以下なら受けない」を紙に1行書く。その場で思い出せる形にしておく。
いちこ
失注するくらいなら受けてしまいます。
シュン
その気持ちになる前に決めるんだ。線が引いてあると、断るのが判断じゃなく確認になるよ。
この本の限界と、次に読む本
事例が多く分量もある。先に ハーバード流交渉術 で原則を押さえ、難局の対処として本書に進む順序が読みやすい。相手の社内合意を動かす視点なら 隠れたキーマンを探せ! が補いになる。
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