確率思考の戦略論 の書影

確率思考の戦略論

USJでも実証された数学マーケティングの力

森岡毅・今西聖貴

「市場が悪い」で会議が終わる。市場のどこなら自分たちで動かせるのかを、確率の言葉で切り分ける論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 「市場が悪い」で議論が止まる
  • マーケと営業の会話が噛み合わない
  • 数字で戦略を語りたい

−おすすめしない人

  • 数式が出ると読み進められない
  • BtoBの商談手法を探している

著者について

森岡毅・今西聖貴

刀 代表 / 元・USJ マーケティング責任者

経歴
P&G → ユー・エス・ジェイ(USJ)マーケティング責任者 → 刀を設立
実績
USJの入場者数回復を主導し、需要を確率分布として扱う方法を公開した

KADOKAWA / 2016年5月

目的

未達の理由を聞くと「市場環境が厳しい」と返ってくる。反論の材料もないので、会議はそこで終わる。

必要なのは市場を嘆くことではなく、市場のどこが動かせてどこが動かせないかを分けることだ。本書を読む目的は、その切り分けを数字の言葉で持つことにある。

論点1 動かせるのは「選ばれる確率」のほう

市場そのものの大きさ 何人が、どれくらいの頻度で この種の買い物をするか 短期ではほぼ動かせない その中で選ばれる割合 自社が選ばれる確率 プレファレンス・認知・配荷 ここが打ち手の置き場所 「市場が悪い」で止まらず、動かせる側に話を移す
市場の大きさは短期で動かせない。動かせるのは選ばれる割合。

本書は売上を、市場そのものの大きさと、その中で自社が選ばれる割合に分けて考える。前者は短期ではほぼ動かない。

  • 市場の大きさ … 何人がどれくらいの頻度でこの種の買い物をするか
  • 選ばれる割合 … ここが打ち手の置き場所

この切り分けができると、会議の話題が変わる。「市場が悪い」で止まらず、「では選ばれる割合をどう上げるか」に移れる。

いちこ

いちこ

市場のせいにして終わっていました…。
シュン

シュン

市場の話は正しいことが多いんだ。ただ、そこで止まると打ち手が出てこない。

論点2 動かせる項は3つしかない

プレファレンス 選ばれやすさ 認知 知られているか 配荷 買える状態にあるか × × 売上を動かせる場所は、この3つしかない 打ち手を思いつく前に、どの項を動かす話なのかを決める
選ばれやすさ・知られているか・買える状態か。この3つの掛け算。

選ばれる割合を、本書はさらに3つに分解する。プレファレンス(選ばれやすさ)、認知、配荷の3つだ。

BtoBに置き換えると、提案の魅力そのもの、自社が候補に入っているか、そして買える状態が整っているか(見積や契約の手続き)になる。

失注の理由を、この3つのどれかに仕分けてみる。「魅力で負けた」のか「そもそも呼ばれていない」のか「手続きで脱落した」のかで、打ち手はまったく違う。

論点3 市場は「たまに買う多数」でできている

人数 購入回数 1回だけ 何度も ここを増やそうとしがちだが 人数が少ないので、総量は動かない 市場は「たまに買う多数」でできている
購入回数の分布は、少数のヘビーと多数のライトに分かれる。

本書が数字で示すのは、購買の分布が偏っているという事実だ。何度も買う層は目立つが人数が少なく、総量を支えているのはたまにしか買わない多数のほうになる。

営業の文脈だと、既存の優良顧客を深掘りする施策は見栄えがいいが、対象人数が少ないため総量は動きにくい。一方で、年に1回しか接点のない層のほうが母数は大きい。

分布を見ずに平均だけで判断すると、この構造を見落とす。分布とばらつきの見方は 分散・標準偏差、確率での見込みの立て方は ヨミ・着地見込みは当たっているか に。

いちこ

いちこ

優良顧客を増やす話ばかりしていました。
シュン

シュン

悪くはないよ。ただ、人数が少ないぶん総量への効きは限られる。そこを分かって選ぶかどうかだね。

この本の限界と、次に読む本

後半は数学的な記述が続くので、そこは飛ばしても前半の考え方だけで十分に使える。統計そのものを学び直すなら、西内啓『統計学が最強の学問である』のほうが入口として軽い。

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この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。

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