統計学が最強の学問である の書影

統計学が最強の学問である

データ社会を生き抜くための武器と教養

西内啓

データは集めた。グラフも作った。それでも打ち手が決まらない。統計を「分析の技術」ではなく「判断の道具」として使うための論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • データはあるが判断に使えていない
  • 施策の効果を聞かれて感覚で答えている
  • 統計を学び直したい

−おすすめしない人

  • 統計手法を体系的に学びたい
  • 分析の実装方法を知りたい

著者について

西内啓

統計家 / データサイエンティスト

経歴
東京大学で生物統計学を学び、調査・医療・企業のデータ分析に携わってきた
実績
統計リテラシーを一般向けに押し広げ、分野をまたいだ読者を獲得した

ダイヤモンド社 / 2013年1月

目的

ダッシュボードは整った。月次でグラフも出ている。それなのに会議では「で、どうしますか」の後に沈黙が流れる。

足りないのはデータ量ではない。そのデータで何が言えるのかを判断する枠組みのほうだ。本書を読む目的は、統計を分析の技術ではなく判断の道具として使えるようにすることにある。

論点1 集める量より、集め方で結論が変わる

選び方が偏っている 無作為に割り付ける やる気のある人が研修に参加 → 参加者の成績が良い 研修が効いたのか、 もともと優秀だったのかが分からない くじ引きで参加者を決める → 両群の条件が揃う 差が出たなら、 それは研修の効果と言える データを増やすより、どう集めるかのほうが結論を左右する
選び方が偏っていると、効果なのか元々の差なのかが区別できない。

本書が繰り返すのは、データの取り方が結論を決めるという一点だ。

研修を受けた人の成績が良かったとする。だが参加者が「やる気のある人」だったなら、研修が効いたのか元々優秀だったのかは区別できない。

  • 偏った選び方 … どれだけ件数を集めても、この曖昧さは消えない
  • くじ引きで割り付ける … 条件が揃うので、差が効果だと言える

全社展開の前に一部でくじ引き的に試す、という手順を踏めるかどうかで、その後の判断の確からしさが決まる。

いちこ

いちこ

とりあえず件数を増やせばいいと思っていました。
シュン

シュン

偏ったデータは、増やすと偏りも一緒に増えるんだ。量より先に集め方だね。

論点2 「何%動いたか」だけでは判断できない

同じ「受注率 +5ポイント」でも 20件で比べた 1〜2件ずれただけで 簡単にひっくり返る 偶然の範囲 500件で比べた 偶然でこの差が出る確率は かなり小さい 効果と言ってよい 「何%動いたか」だけでは判断できない。必ず件数とセットで見る 数字の大きさではなく、偶然で説明がつくかどうかを問う
同じ差でも、何件で比べたかによって意味が変わる。

受注率が5ポイント上がった。この数字だけでは、効果なのか偶然なのか分からない。判断には件数が要る。

  • 20件で比べた … 1〜2件ずれただけでひっくり返る
  • 500件で比べた … 偶然でこの差が出る確率は小さい
差を報告するときは、必ず母数を添える。「受注率が5ポイント改善(n=18)」と書けば、受け手も判断を誤らない。

偶然と本物を分ける手順は その施策、本当に効いたか に、必要な件数の決め方は 営業メールのA/Bテスト、何件配信すれば判断できるか にまとめている。

論点3 分析の価値は「行動が変わるか」で決まる

分析して分かった それで、 明日から何を変える? 答えられる → 価値あり 答えられない → 雑学 分析を始める前に、この問いに答えられるか確かめる
分析の後に何を変えるかを答えられなければ、その分析は雑学になる。

本書の実務的な効用は、手法より何のために分析するのかを先に問う姿勢にある。

「受注率が高いのは40代の担当者」と分かったとして、明日から何を変えるのか。答えられないなら、それは面白い事実であって、判断材料ではない。

いちこ

いちこ

分析して満足していたことがあります…。
シュン

シュン

よくあるよ。だから着手前に「結果が出たら何を変えるか」を書いておくんだ。書けないなら、その分析はやらなくていい。

この本の限界と、次に読む本

本書は手法書ではなく考え方の本なので、計算手順は扱わない。因果関係の判定に絞って深めたいなら、中室牧子・津川友介『「原因と結果」の経済学』のほうが直接的だ。

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自社の数字で確かめる

この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。

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