「この施策をやったら数字が伸びた」。それは効果なのか、偶然か、順番が逆なのか。相関と因果を分ける論点を3つ紹介する。
✓お勧めする人
- 施策の効果を正しく語りたい
- 会議の「だから〜すべき」に違和感がある
- KPIを設計する立場にある
−おすすめしない人
- 分析の実装手順を知りたい
- 統計の計算方法を学びたい
著者について
中室牧子・津川友介
医療経済学者
- 経歴
- 医療政策と経済学を専門とし、因果推論の手法で政策の効果を検証してきた
- 実績
- 身近な題材で因果と相関の違いを説明した
目的
「訪問回数が多い営業ほど受注している。だから訪問を増やそう」。会議でこの結論が出たとき、違和感がありつつ反論できなかったことはないだろうか。
本書を読む目的は、その違和感を言葉にして反論できる状態にすることにある。関係があることと、原因であることは違う。
論点1 関係が見えたら、まず3つを疑う
本書は、相関を因果と取り違える典型を整理している。実務で効くのは次の3つだ。
- 偶然 … たまたま一致しただけ
- 逆の因果 … 受注しそうな案件だから訪問している、のかもしれない
- 第三の要因 … 担当業種や案件規模が、訪問数と受注の両方を動かしている
先の例でいえば、2つ目がかなり怪しい。訪問が受注を生んだのではなく、見込みの高い案件に足が向いていただけ、という説明が成り立つ。
いちこ
シュン
論点2 比べる相手を用意して、はじめて効果になる
本書の中心にあるのが、やらなかった場合はどうだったかという問いだ。施策の効果とは、実際の結果とこの差のことになる。
ところが同じ人に「やった場合」と「やらなかった場合」の両方を起こすことはできない。だから、できるだけ条件の近い別のグループを置いて代用する。
比較の実務的な手順は 研修・施策の効果測定はどうやるか に書いている。
論点3 根拠の強さには、はっきり階層がある
本書を読んで最も実務が変わるのが、この視点だと思う。根拠はすべて対等ではなく、強さの順番がある。
- 条件を揃えて比べた … 最も強い
- 条件の違いを補正して比べた … それに次ぐ
- 比べずに前後だけ見た … 弱い
- 成功事例・経験者の実感 … 最も弱い
商談で「導入企業様の成功事例があります」と言うとき、それは階層の一番下を提示している。弱いから使うなではなく、弱いと知って使うかどうかが分かれ目になる。
見かけの相関に引っかからないための手順は そのKPI、本当に成果につながるか に。
いちこ
シュン
この本の限界と、次に読む本
数式はほとんど出てこないので2〜3時間で読める。統計の全体像から入りたいなら、西内啓『統計学が最強の学問である』と並べて読むと噛み合う。
自社の数字で確かめる
この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。
数と因果のほかの本
- FACTFULNESS ハンス・ロスリング・オーラ・ロスリング・アンナ・ロスリング・ロンランド
- 統計学が最強の学問である 西内啓
- データ分析の力 伊藤公一朗
- 定量分析の教科書 グロービス
- 「数字で考える」は武器になる 中尾隆一郎
- 予想どおりに不合理 ダン・アリエリー