「原因と結果」の経済学 の書影

「原因と結果」の経済学

データから真実を見抜く思考法

中室牧子・津川友介

「この施策をやったら数字が伸びた」。それは効果なのか、偶然か、順番が逆なのか。相関と因果を分ける論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 施策の効果を正しく語りたい
  • 会議の「だから〜すべき」に違和感がある
  • KPIを設計する立場にある

−おすすめしない人

  • 分析の実装手順を知りたい
  • 統計の計算方法を学びたい

著者について

中室牧子・津川友介

医療経済学者

経歴
医療政策と経済学を専門とし、因果推論の手法で政策の効果を検証してきた
実績
身近な題材で因果と相関の違いを説明した

ダイヤモンド社 / 2017年2月

目的

「訪問回数が多い営業ほど受注している。だから訪問を増やそう」。会議でこの結論が出たとき、違和感がありつつ反論できなかったことはないだろうか。

本書を読む目的は、その違和感を言葉にして反論できる状態にすることにある。関係があることと、原因であることは違う。

論点1 関係が見えたら、まず3つを疑う

「AとBに関係がある」と見えたとき、疑う3つ 偶然 たまたま一致しただけ 逆の因果 BがAの原因かもしれない 第三の要因 別の何かが両方を動かしている 例:よく訪問する営業ほど受注が多い → 受注しそうな案件だから訪問している(逆の因果)のかもしれない
偶然・逆の因果・第三の要因。この3つを外せて、はじめて因果の候補になる。

本書は、相関を因果と取り違える典型を整理している。実務で効くのは次の3つだ。

  • 偶然 … たまたま一致しただけ
  • 逆の因果 … 受注しそうな案件だから訪問している、のかもしれない
  • 第三の要因 … 担当業種や案件規模が、訪問数と受注の両方を動かしている

先の例でいえば、2つ目がかなり怪しい。訪問が受注を生んだのではなく、見込みの高い案件に足が向いていただけ、という説明が成り立つ。

いちこ

いちこ

言われてみれば、逆もあり得ますね。
シュン

シュン

この3つを口に出して確かめるだけで、会議の精度はかなり変わるよ。

論点2 比べる相手を用意して、はじめて効果になる

効果 = 実際の結果 − やらなかった場合の結果 施策をやったグループ 受注率 24% これは観測できる やらなかった場合の同じ人たち 受注率 ? 観測できない。だから対照群で代用する 「施策後に上がった」は効果ではない。比べる相手を用意して、はじめて効果になる
やらなかった場合の結果は観測できない。だから対照群で代用する。

本書の中心にあるのが、やらなかった場合はどうだったかという問いだ。施策の効果とは、実際の結果とこの差のことになる。

ところが同じ人に「やった場合」と「やらなかった場合」の両方を起こすことはできない。だから、できるだけ条件の近い別のグループを置いて代用する。

「施策の後に数字が上がった」は、効果の証明にならない。季節要因や別の施策でも同じ動きは起きる。比べる相手がないまま効果を主張していないか。

比較の実務的な手順は 研修・施策の効果測定はどうやるか に書いている。

論点3 根拠の強さには、はっきり階層がある

条件を揃えて比べた(ランダム化比較) 条件の違いを補正して比べた 比べずに、前後だけ見た 経験者の実感・事例 強い 弱い 「成功事例があります」は、根拠としては一番下にある
条件を揃えて比べたものが最も強く、事例や実感は最も弱い。

本書を読んで最も実務が変わるのが、この視点だと思う。根拠はすべて対等ではなく、強さの順番がある。

  • 条件を揃えて比べた … 最も強い
  • 条件の違いを補正して比べた … それに次ぐ
  • 比べずに前後だけ見た … 弱い
  • 成功事例・経験者の実感 … 最も弱い

商談で「導入企業様の成功事例があります」と言うとき、それは階層の一番下を提示している。弱いから使うなではなく、弱いと知って使うかどうかが分かれ目になる。

見かけの相関に引っかからないための手順は そのKPI、本当に成果につながるか に。

いちこ

いちこ

事例って一番強い武器だと思っていました。
シュン

シュン

説得力はあるよ。ただ「それが原因だ」という根拠としては弱い。使い分けの問題だね。

この本の限界と、次に読む本

数式はほとんど出てこないので2〜3時間で読める。統計の全体像から入りたいなら、西内啓『統計学が最強の学問である』と並べて読むと噛み合う。

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自社の数字で確かめる

この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。

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