他者と働く の書影

他者と働く

「わかりあえなさ」から始める組織論

宇田川元一

正しいことを言っているのに動いてもらえない。相手にも相手の筋があると考えるところから始める論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 他部署との調整が多い
  • 正論が通らない場面がある
  • 現場が形だけ従って変わらない

−おすすめしない人

  • すぐ使える話法を探している
  • 一人で完結する仕事が中心

著者について

宇田川元一

埼玉大学経済経営系大学院 准教授

経歴
経営戦略と組織論を専門に研究してきた
実績
対話を通じて組織の溝を越える「ナラティヴ・アプローチ」を実務に持ち込んだ

ニューズピックス / 2019年10月

目的

データも揃えた。筋も通っている。それでも他部署は動かないし、現場は乗ってこない。何度説明しても「わかりました」で終わる。

ここで「理解力が足りない」と考えると行き詰まる。本書を読む目的は、正しさを足しても動かない問題の扱い方を知ることにある。

論点1 相手には相手の筋が通っている

こちらから見た相手 動かない。分かっていない 会社の方針に非協力的 →「説得」しようとする 相手の側から見ると 現場が回らなくなる 前にも同じ号令で失敗した → 守るべきものがある どちらも正しい。だから正しさを足しても動かない
どちらも正しいからこそ、正しさを足しても動かない。

本書の出発点は、立場が違えば見えているものが違うという一点にある。動かない相手は、怠けているのでも分かっていないのでもなく、守るべきものが違う。

  • こちらの筋 … 全社方針として必要だ
  • 相手の筋 … 現場が回らなくなる。前にも同じ号令で失敗した

両方正しいので、説明を重ねても解けない。解けないまま押すと、表面的に従って実質は変わらないという状態になる。

いちこ

いちこ

説明が足りないんだと思っていました。
シュン

シュン

足りないんじゃなくて、相手の事情が見えていないことが多いんだ。

論点2 手順で解ける問題と、そうでない問題を分ける

手順で解ける問題 やり方が分かれば解決する 例:提案書の作り方 研修やマニュアルが効く 関係の中でしか解けない問題 立場が違うことが原因 例:営業と開発の対立 正論を足しても解けない どちらの問題かを見誤ると、打ち手がずっと空振りする
やり方の問題なのか、立場の違いが原因なのか。

本書は問題を2つに分ける。やり方が分かれば解決するものと、関係の中でしか解けないものだ。

  • 手順で解ける … 提案書の作り方。研修やマニュアルが効く
  • 関係の問題 … 営業と開発の対立。正論を足しても解けない

見誤ると打ち手が空振りし続ける。研修を増やしても対立が消えないのは、問題の種類を取り違えているからだ。

論点3 いきなり提案せず、相手の筋を組み立てる

準備 相手の事情を知ろうとする 観察 何を守ろうとしているか見る 解釈 相手の筋を自分なりに組む 介入 その筋の上で提案を置き直す いきなり「介入」から入ると、正論を押しつけることになる
準備・観察・解釈・介入。介入はいちばん最後にくる。

本書が示す順序は、準備・観察・解釈・介入の4段階になっている。実務で飛ばされがちなのが解釈の部分だ。

相手が何を守ろうとしているのかを自分なりに組み立てたうえで、その筋の上に提案を置き直す。順序を飛ばして介入から入ると、正論の押しつけになる。

次に動いてもらいたい相手について「この人が守ろうとしているものは何か」を一文で書いてみる。書けないなら、まだ観察が足りない。

1on1で相手の話を引き出す具体は ヤフーの1on1、言いにくいことが言える土壌の作り方は 恐れのない組織 に。

いちこ

いちこ

「相手が守りたいもの」から考えるんですね。
シュン

シュン

そこが見えると、提案の置き方が変わる。同じ中身でも通り方が違うよ。

この本の限界と、次に読む本

短く読めるが、扱っているのは技術ではなく姿勢の話になる。手早い解決策を期待すると物足りない。

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