ジョブ理論 の書影

ジョブ理論

イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

クレイトン・M・クリステンセン

「なぜ買わないのか」を機能で説明しようとすると行き詰まる。顧客が何を片づけたくて動くのかから考え直す論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 機能で勝っているのに負ける
  • 失注理由が「検討します」ばかり
  • 新しい市場を開きたい

−おすすめしない人

  • すぐ使える商談のフレームを探している
  • 既存顧客の深耕が主な課題

著者について

クレイトン・M・クリステンセン

ハーバード・ビジネス・スクール 教授

経歴
経営学者として破壊的イノベーションの研究を主導した
実績
顧客が商品を「雇う」理由という枠組みで、needs の捉え方を刷新した

ハーパーコリンズ・ジャパン / 2017年8月

目的

機能では勝っている。価格も見劣りしない。それなのに決まらない。理由を聞いても「検討します」しか返ってこない。

見ているものがずれている。顧客は製品を比べているのではなく、片づけたい用事を片づけようとしているだけだ。本書を読む目的は、顧客を製品の軸ではなく用事の軸で捉え直すことにある。

論点1 顧客は製品ではなく、用事のために雇う

製品を軸に考える 「誰がSFAを買うか」 → 競合は他のSFA → 機能比較の勝負になる 用事を軸に考える 「何を片づけたくて導入するのか」 役員会で詰められたくない → 競合はExcelや現状維持 同じ商材でも、用事が違えば競合も決め手も変わる
製品を軸にすると競合は同カテゴリの製品。用事を軸にすると競合は現状維持になる。

本書の中心にあるのは、顧客は製品を買うのではなく、ある状況で特定の用事を片づけるために製品を雇うという見方だ。

SFAを例にすると、「SFAを買う人」を考えているうちは競合は他社SFAになり、機能比較の勝負になる。だが「役員会で詰められたくない」という用事から見ると、競合はExcelであり、現状維持になる。

  • 製品軸 … 比較表で勝つ必要がある
  • 用事軸 … 今のやり方では用事が片づかないことを示せばいい
いちこ

いちこ

競合が変わるんですね。
シュン

シュン

そう。しかも一番手強い競合は、だいたい「今のままでいい」なんだ。

論点2 動かない理由は、売り手が思う側にない

検討中の顧客 動かない状態 いまの不満 新しい解への期待 変えることへの不安 いまのやり方への慣れ 提案は左の2つを強めることに集中しがち だが動かない理由は、たいてい右の2つにある
進める力と引き止める力が釣り合うと、顧客は動かない。

本書が示すのは、購買の場面では相反する力が働いているという見方だ。進める側に「今の不満」と「新しい解への期待」、引き止める側に「変えることへの不安」と「今のやり方への慣れ」がある。

提案は前者を強めることに集中しがちだが、動かない理由はたいてい後者にある。いくら魅力を足しても、不安が同じだけあれば釣り合ったままになる。

次の商談で「導入したとして、一番面倒そうなのはどこですか」と聞いてみる。引き止める力が言語化されると、そこが提案に書くべき項目になる。

論点3 聞くべきは「なぜ今なのか」

不満はあるが我慢 何かが起きる 探しはじめる 導入する きっかけの例 期初の方針変更 / 役員交代 / 大型失注 聞くべきは「何に困っているか」より「なぜ今なのか」
不満を抱えていても人は動かない。動き出すきっかけがある。

不満があることと、動き出すことは別だ。多くの顧客は不満を抱えたまま何年も我慢している。間に何かの出来事が挟まって、はじめて探しはじめる。

  • 期初の方針変更、役員交代、大型失注
  • こうした出来事が、我慢のコストを上回らせる

だから課題を聞くだけでは足りない。「なぜ今なのか」を聞くと、相手の本当の期限と、社内で何が起きているかが見えてくる。

いちこ

いちこ

「なぜ今」は聞いていませんでした。
シュン

シュン

ここが空欄の商談は、だいたい先送りされるよ。急ぐ理由が相手の中にないからね。

この本の限界と、次に読む本

本書は消費財やBtoCの事例が中心で、BtoBの商談にそのまま当てはまる形では書かれていない。商談の進め方に落とすなら、高橋浩一『無敗営業』やニール・ラッカム『SPIN営業術』のほうが直接的だ。

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顧客理解のほかの本