イノベーションのジレンマ の書影

イノベーションのジレンマ

技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

クレイトン・クリステンセン

「うちの客ではない」と切り捨てた案件が、数年後に市場を取っていることがある。その構造を説明する論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 既存商材が成熟している
  • 安価な代替品に負けはじめた
  • 事業の方向に関わる立場

−おすすめしない人

  • 目の前の商談スキルを上げたい
  • 立ち上げ期の事業にいる

著者について

クレイトン・クリステンセン

ハーバード・ビジネス・スクール 教授

経歴
経営学者として技術革新と企業の盛衰を研究した
実績
優良企業が新技術に負ける構造を「破壊的イノベーション」として定式化した

翔泳社 / 2001年7月(増補改訂版)

目的

「そこまでの機能は要らない」と言われて失注した。安い代替品を選ばれた。社内では「価格でしか見ない客だった」と片づけられる。

その処理が続くと、気づいたときには市場ごと移っている。本書を読む目的は、正しい判断の積み重ねがなぜ遅れを生むのかを理解することにある。

論点1 性能は、必要水準を追い越す

性能 時間 既存製品の性能 顧客が必要とする水準 安くて単純な代替品 性能が必要水準を超えると、顧客は「十分なら安いほう」を選びはじめる
性能向上が顧客の必要水準を超えると、選ばれ方が変わる。

本書の核にあるのは、製品の性能向上が顧客の必要水準より速いという観察だ。追い越した瞬間から、顧客にとっての判断基準が変わる。

  • 必要水準に届いていない間 … 性能が高いほうが選ばれる
  • 追い越したあと … 十分なら安いほうが選ばれる

「十分です」という言葉は、性能競争の土俵が終わったことの合図になる。

いちこ

いちこ

機能を足し続ければいいわけではないんですね。
シュン

シュン

足し続けた先で、顧客が求めていない性能で勝負していることがあるんだ。

論点2 見送った判断は、どれも正しかった

優良顧客の声を聞く 利益率の高い案件を優先 小さく不確実な市場は後回し ++ 新しい市場の立ち上がりを見送る どの判断も、その時点では正しい
優良顧客の声を聞き、利益率を優先する。その結果として見送りになる。

本書が指摘するのは、優良企業が怠けたからではないという点だ。むしろ教科書どおりに正しく経営した結果として新しい市場を見送っている。

  • 優良顧客の声を聞く → 既存製品の改良が優先される
  • 利益率の高い案件を選ぶ → 単価の低い新市場は後回しになる
  • 市場規模で判断する → 立ち上がり期の小さな市場は対象外になる
「今期の数字で判断する」という当たり前の運用が、そのまま新しい芽を外す仕組みになっている。悪意も怠慢も要らない。

論点3 最初に気づけるのは営業である

失注理由の中に紛れている兆候 「そこまでの機能は要らない」 「無料ツールで足りている」 「いまは別のやり方で回している」 「うちの客では ない」で 片づけられる 最初に気づけるのは、その言葉を直接聞いている営業である
失注理由の中に、市場が動く兆候が紛れている。

ここは本書の主張というより、営業の立場から読んだときの含意になる。兆候が最初に現れるのは、失注理由の言葉の中だ。

  • 「そこまでの機能は要らない」
  • 「無料ツールで足りている」

これらは「うちの客ではない」で処理されやすい。だが同じ言葉が増えているなら、それは個別の失注ではなく市場の変化になる。失注理由を分類して件数の推移を見ると、その違いが分かる。

見かけの傾向と本当の変化を取り違えないための見方は そのKPI、本当に成果につながるか に。

いちこ

いちこ

失注理由って、あまり見返していませんでした。
シュン

シュン

個別に見ると言い訳に見えるんだ。でも並べて数えると、市場の話になることがあるよ。

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