KPIが並んだダッシュボードはあるのに、今週どれを優先すべきか誰も言えない。その状態を抜けるために、本書が解いている論点を3つに絞って紹介する。
✓お勧めする人
- 追う指標が増えすぎた
- KPIを置いたのに現場が動かない
- 週次の会議が報告だけで終わっている
−おすすめしない人
- まだ事業プロセスが固まっていない立ち上げ期
- 統計的な因果推論の方法論を求めている
著者について
中尾隆一郎
元・リクルート 事業責任者
- 経歴
- リクルートで住宅情報事業やスーモカウンターの事業責任者を担当
- 実績
- スーモカウンターの事業を6年で売上30倍に伸ばした
目的
ダッシュボードには指標が並んでいる。架電数、商談数、提案数、受注率、単価、稼働率。どれも「大事」だと言われている。それなのに、今週どれを優先すべきかを聞くと誰も答えられない。
指標が足りないのではない。多すぎて、優先順位を決めていないのだ。本書を読む目的は、追う数字を減らすことにある。
論点1 KPIが10個あるなら、それはKPIではない
本書の中心にあるのは、KPIを1つに絞るという主張だ。手順は、最終的に到達したい数字(KGI)を置き、そこに最も効くプロセス(CSF)を1つ特定し、そのプロセスの進み具合を測る数字をKPIにする、という順になる。
- KGI … 受注額、解約率など、最終的に動かしたい結果
- CSF … そこに最も効く、ひとつのプロセス
- KPI … そのプロセスが進んでいるかを測る、ひとつの数字
絞ると不安になるが、不安の正体は「他も大事だから」である。全部が大事だという状態は、何も選んでいない状態と区別がつかない。
いちこ
シュン
論点2 KPIは「成績表」ではなく「信号」
もうひとつの軸が、先行指標を選ぶことだ。受注額のような結果指標は、分かった時点で月が終わっている。見ているのは成績表であって、行動を変える材料にはならない。
KPIに置くべきなのは、毎週見て毎週打ち手を変えられる数字になる。選ぶときの条件は単純で、次の2つを満たすかどうかだ。
- 先行性 … 結果より前に動く(月末を待たずに分かる)
- 可動性 … 現場の行動で実際に動かせる(景気や季節ではない)
論点3 絞った瞬間から、人はその数字に最適化する
ここからは本書の主張というより、運用してみると必ずぶつかる話になる。KPIを1つに絞ると現場の視線はそこに集中し、その数字を上げる最短経路が探される。架電数をKPIにすれば、つながらない時間帯の短い電話が増える。
数字は動く。しかし動かしたかったKGIは動かない。これはサボりではなく、絞ったことの副作用である。
そもそもその数字が成果の原因なのかという点検も要る。架電量と成果の関係は典型例で、相関があっても因果とは限らない(架電量と成果の関係)。見かけの相関を見抜く手順は そのKPI、本当に成果につながるか に。
いちこ
シュン
この本の限界と、次に読む本
後者は本書の範囲外になる。平易で事例も多く、2〜3時間で読める。工程そのものの設計から考えたいなら、福田康隆『THE MODEL』と並べて読むと噛み合う。
自社の数字で確かめる
この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。
KPIと予実のほかの本
- THE MODEL 福田康隆
- 最高の結果を出すKPI実践ノート 中尾隆一郎
- 「数字で考える」は武器になる 中尾隆一郎
- 売上最小化、利益最大化の法則 木下勝寿
- ネット・プロモーター経営 フレッド・ライクヘルド・ロブ・マーキー