最高の結果を出すKPIマネジメント の書影

最高の結果を出すKPIマネジメント

中尾隆一郎

KPIが並んだダッシュボードはあるのに、今週どれを優先すべきか誰も言えない。その状態を抜けるために、本書が解いている論点を3つに絞って紹介する。

✓お勧めする人

  • 追う指標が増えすぎた
  • KPIを置いたのに現場が動かない
  • 週次の会議が報告だけで終わっている

−おすすめしない人

  • まだ事業プロセスが固まっていない立ち上げ期
  • 統計的な因果推論の方法論を求めている

著者について

中尾隆一郎

元・リクルート 事業責任者

経歴
リクルートで住宅情報事業やスーモカウンターの事業責任者を担当
実績
スーモカウンターの事業を6年で売上30倍に伸ばした

フォレスト出版 / 2018年7月

目的

ダッシュボードには指標が並んでいる。架電数、商談数、提案数、受注率、単価、稼働率。どれも「大事」だと言われている。それなのに、今週どれを優先すべきかを聞くと誰も答えられない。

指標が足りないのではない。多すぎて、優先順位を決めていないのだ。本書を読む目的は、追う数字を減らすことにある。

論点1 KPIが10個あるなら、それはKPIではない

よくある状態 絞ったあと 架電数商談数提案数受注率平均単価稼働率返信率訪問数解約率 全部「大事」なので、優先順位が決まらない KGI 最終的に到達したい数字 CSF そこに最も効く、ひとつのプロセス KPI そのプロセスの進み具合を測る数字(1つ) 追う数字が10個あるうちは、優先順位を決めていないのと同じ
KGI(最終目標)→CSF(最も効くプロセス)→KPI(その進み具合を測る1つの数字)の順に絞る。

本書の中心にあるのは、KPIを1つに絞るという主張だ。手順は、最終的に到達したい数字(KGI)を置き、そこに最も効くプロセス(CSF)を1つ特定し、そのプロセスの進み具合を測る数字をKPIにする、という順になる。

  • KGI … 受注額、解約率など、最終的に動かしたい結果
  • CSF … そこに最も効く、ひとつのプロセス
  • KPI … そのプロセスが進んでいるかを測る、ひとつの数字

絞ると不安になるが、不安の正体は「他も大事だから」である。全部が大事だという状態は、何も選んでいない状態と区別がつかない。

いちこ

いちこ

1つだけって、ほかを捨てることになりませんか?
シュン

シュン

見るのをやめるわけじゃないよ。 「今週の打ち手を決める数字」を1つにする、という話なんだ。

論点2 KPIは「成績表」ではなく「信号」

第1週第2週第3週第4週月末 受注額 結果指標 … 分かった時には、もう動かせない 先行指標先行指標先行指標先行指標 毎週見て、毎週打ち手を変えられる数字をKPIに置く KPIは成績表ではなく、進むべき方向を示す信号
結果指標は月末にしか分からない。先行指標なら毎週打ち手を変えられる。

もうひとつの軸が、先行指標を選ぶことだ。受注額のような結果指標は、分かった時点で月が終わっている。見ているのは成績表であって、行動を変える材料にはならない。

KPIに置くべきなのは、毎週見て毎週打ち手を変えられる数字になる。選ぶときの条件は単純で、次の2つを満たすかどうかだ。

  • 先行性 … 結果より前に動く(月末を待たずに分かる)
  • 可動性 … 現場の行動で実際に動かせる(景気や季節ではない)
いま追っている数字を1つ選び、「これは今週動かせるか」と問う。答えが「来月にならないと分からない」なら、それはKPIではなく結果指標である。

論点3 絞った瞬間から、人はその数字に最適化する

導入前1か月2か月3か月 架電数(KPI) 受注(KGI) 数字は動いた。しかし、動かしたかったものは動いていない
KPIに置いた数字だけが伸び、動かしたかった結果が動かないことがある。

ここからは本書の主張というより、運用してみると必ずぶつかる話になる。KPIを1つに絞ると現場の視線はそこに集中し、その数字を上げる最短経路が探される。架電数をKPIにすれば、つながらない時間帯の短い電話が増える。

数字は動く。しかし動かしたかったKGIは動かない。これはサボりではなく、絞ったことの副作用である。

置いたKPIは、KGIと一緒に並べて見ること。KPIだけが伸びてKGIが横ばいなら、そのCSFの選択か、指標の定義を疑う。

そもそもその数字が成果の原因なのかという点検も要る。架電量と成果の関係は典型例で、相関があっても因果とは限らない(架電量と成果の関係)。見かけの相関を見抜く手順は そのKPI、本当に成果につながるか に。

いちこ

いちこ

絞るだけじゃダメで、点検までセットなんですね。
シュン

シュン

そう。置いて終わりにすると、現場が数字合わせを始める。置いたあとに何を見るかまでが設計だよ。

この本の限界と、次に読む本

後者は本書の範囲外になる。平易で事例も多く、2〜3時間で読める。工程そのものの設計から考えたいなら、福田康隆『THE MODEL』と並べて読むと噛み合う。

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自社の数字で確かめる

この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。

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