セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方 の書影

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

山下貴宏

研修はやった。満足度も高かった。それでも数字が変わらない。育成を「やったかどうか」から「成果が動いたか」に変えるための論点を3つ紹介する。

✓お勧めする人

  • 研修が成果に結びついていない
  • 採用を増やしたが立ち上がりが遅い
  • 育成を属人化から外したい

−おすすめしない人

  • 営業が数名で型を作る段階にない
  • 個別の商談スキルを磨く本を探している

著者について

山下貴宏

セールス・イネーブルメントの実務者

経歴
営業組織の育成と仕組み化に長年携わってきた
実績
研修を「やったか」ではなく「行動が変わったか」で測る設計を提示した

かんき出版 / 2019年12月

目的

研修を実施した。アンケートの満足度も高い。報告書には「受講率100%」と書いてある。それでも半年後、受注率は動いていない。

問題は研修の質ではなく、何をもって成功とするかを決めていないことにある。本書を読む目的は、育成を感覚の施策から、成果から逆算した仕組みに変えることにある。

論点1 「やったか」ではなく「行動が変わったか」で測る

研修を実施した 実施回数・受講率 理解した テスト・満足度 行動が変わった 商談での実行率 成果 受注・単価 ここで止まりがち 測るべきは左端ではなく、右の2つ
実施数や満足度は左端の指標でしかない。見るべきは行動の変化とその先の成果。

育成の効果は4段階に分けて考えられる。実施した → 理解した → 行動が変わった → 成果が動いた、の順だ。多くの組織は左の2つで評価を止めている。

  • 実施数・受講率 … 実施したことの記録。成果とは無関係
  • 商談での実行率 … 行動が変わったかが分かる最初の指標

測定を1段右にずらすだけで、研修の設計が変わる。「覚えてもらう」ではなく「商談で使わせる」が目的になるからだ。

いちこ

いちこ

満足度アンケート、よく取っていました…。
シュン

シュン

悪くはないよ。ただ、満足度が高くて成果が動かない研修はいくらでもある。測る場所を1つ右にずらすんだ。

論点2 トップの再現ではなく、中間層の底上げ

人数 成績 人数が最も多い中間層 トップ層 少数を大きく伸ばすより、多数を少し動かすほうが総和は増える
人数が最も多いのは中間層。少数を大きく伸ばすより、多数を少し動かすほうが総和は増える。

育成というと、トップセールスのやり方を言語化して配る発想になりやすい。しかし組織の成績は分布しており、人数が最も多いのは中間層だ。

  • トップ層を伸ばす … 対象人数が少ないので、総和への寄与は限られる
  • 中間層を伸ばす … 一人あたりの伸びが小さくても、人数が多いぶん総和が大きい

さらに中間層は、伸びしろが残っている層でもある。どこに伸びしろがあるかは、平均だけ見ても分からない。分布とばらつきで見るのが早い(分散・標準偏差)。公平な比較の手順は メンバーをどう評価するか に。

論点3 立ち上がりの速さを、成果指標にする

成果 入社3か月6か月9か月12か月 一人前の水準 仕組みなし(各自の工夫) 仕組みあり この短縮幅が、イネーブルメントの成果
一人前になるまでの期間がどれだけ短くなったか。その短縮幅が成果になる。

イネーブルメントの成果をどう示すかは難しい。本書が挙げる分かりやすい指標のひとつが、新しく入った人が一人前の水準に達するまでの期間だ。

仕組みがなければ、各自の工夫と先輩の属人的な指導に依存し、立ち上がりは人によってばらつく。型があれば、その幅が縮む。

直近1年の入社者について「初受注までの月数」を並べてみる。中央値とばらつきが出せれば、それが改善前の基準値になる。
いちこ

いちこ

育成の成果って測れないと思っていました。
シュン

シュン

全部は測れないよ。でも立ち上がり期間なら測れる。測れるところから始めるのが現実的だね。

この本の限界と、次に読む本

後者なら、ニール・ラッカム『SPIN営業術』のほうが直接的だ。工程の設計から入るなら、福田康隆『THE MODEL』と並べて読むと噛み合う。

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