高収益の理由は値付けではない。比べられない状態をどう作っているかを読む論点を3つ紹介する。
✓お勧めする人
- 値引きでしか差がつかない
- 行動管理の意味を問い直したい
- 営業の仕組みを設計する立場
−おすすめしない人
- すぐ使える商談の型が欲しい
- 自社と事業構造が大きく違う
著者について
西岡杏
日経ビジネス 記者
- 経歴
- キーエンスの元社員や取引先への取材を重ねてきた
- 実績
- 公開情報がきわめて少ない同社の営業と商品開発の仕組みを記事として積み上げた
目的
営業利益率50%超という数字だけが知られている。真似しようとして、行動量の管理だけが社内に入る。
高収益は値付けの結果ではなく、比べられない状態を作っている結果だ。本書を読む目的は、その仕組みを分解して見ることにある。
論点1 比べられる場所に立たない
カタログで比べられる商談では、差をつける手段が値引きしかなくなる。本書が描くのは、その手前の設計だ。
- 価格で取る … 売れた分だけ利益が薄くなる
- 課題で取る … 現場に入り、効果を金額で示す。価格の話にならない
高い利益率は結果であって目的ではない。先にあるのは、比べられる場所に立たないという判断になる。
いちこ
値引きせずに売る方法があるんですね。
シュン
比べられてから値引きを断るのは難しいよ。比べられる前にいるかどうかなんだ。
論点2 件数ではなく、時間の中身を見る
活動量だけを記録すると、少ない人に「増やせ」としか言えない。本書が描く記録は時間の使い方の分解だ。
- 移動・準備・社内作業 … 減らせる対象になる
- 顧客と話す時間 … ここだけを増やす打ち手が立つ
架電量と成果の関係を数字で見るなら そのKPI、本当に成果につながるか に手順がある。
論点3 営業は、情報を持ち帰る人として置かれている
本書で繰り返し出てくるのが、営業が現場で見た困りごとが商品企画に戻る流れだ。そこから他社にない製品が出て、また比べられなくなる。
真似できるのは仕組みの形ではなく、この一周を回し続ける意思のほうだ。行動管理だけを移植すると、記録が増えて何も戻らない状態になる。
自社で、営業が持ち帰った顧客の困りごとが商品や提案の改善に反映された例を1つ挙げられるか。挙がらなければ一周が切れている。
いちこ
売るだけが仕事ではない、ということですか。
シュン
売るのも仕事だけど、持ち帰るほうが長く効くんだ。
この本の限界と、次に読む本
取材をもとにしたルポで、同社自身の説明ではない。制度の細部は推測を含むものとして読む。調査データから営業を見直すなら 営業の科学、工程に分ける設計なら THE MODEL が隣に並ぶ。
Amazonで見る Amazonのアソシエイトとして、SaleStats Lab は適格販売により収入を得ています。
自社の数字で確かめる
この本の考え方を、統計で検証する側の記事です。